トップを走り続ける者に課せられる宿命、それはさらなる高みを目指すこと。BD7 2016への課題は、これまで自身が築いてきた大きな壁を乗り越え、速さとドライバビリティを共に向上させることでした。ワールド チャンピオンマシンBD7シリーズの開発を手掛けてきたチーフメカニック・海野幸次郎が描いたのは”超低重心”というキーワード。世界のレースシーンの頂点で磨かれてきた性能に奢ることなく、すでに低重心化を果たしていたマシンをさらに根本から見直すという大胆な発想でした。
入念なテストから導き出された前後デフプーリーの小径化がもたらしたのは、シャーシを構成する各パーツをより低く搭載し、圧倒的なコーナーリングスピードを可能にする超低重心設計。さらにデフプーリーの直径と重量が軽減されることで、ジャイロ効果を減らしてマシンの運動性能も向上、加えてスロットルレスポンスも良くなるという、様々な点で理にかなった選択でした。それらに合わせてショックも全長を短くし、大径化することで十分な減衰力を確保。フロントユニバーサルにはダブルジョイントタイプを標準装備し、レース対策も万全です。もちろんそれらはBD7の超高精度シャーシだからこそ成し得た選択で、ひとつひとつのパーツを徹底的に洗練させ、完璧なバランスのもとで昇華させた設計思想の具現化と言っても過言ではありません。
車のハンドリングや走行安定性を語る上で重心位置は最も重要な意味を持っています。重心が低いほど、ロール、ピッチなどによる荷重移動量が減り、その荷重移動量が減ると個々のタイヤの接地荷重変動が少なくなり、姿勢変化も抑えられるため、挙動の穏やかさとドライビングに対する応答速度を両立することができます。それとは逆に重心が高いと(現行各社ツーリングカー)、ロールやピッチを小さくするためにショックやスタビライザーを強化するなどの対策が必要になるために、路面のギャップなどに追従しにくく、ハイスピード/ハイグリップ化している近年のツーリングカー レースシーンでは、マシンの挙動を安定させるのが難しくなってきています。BD7 2016は改めて基本性能を見直し、これまで培ったノウハウを積み上げることで、驚くほどのステップアップを果たしています。
前後のドライブプーリーを6mm小径化、ドライブアクスル中心が3mm低くなりました。これにより走行時に回転物が引き起こすジャイロ効果(自転軸の方向が変わりにくくなる効果)が減少し、特にロール方向の動きが良くなるため、シャープなコーナーリングや切り返しが可能になります。さらにプーリーの軽量化によりスロットレスポンスも向上。コーナー脱出時の加速や燃費に良い効果をもたらします。
シャーシを構成するパーツのうち大きな重量を占める前後バルクヘッドは、アッパーバルクヘッド上部で3mmローダウン。アッパーデッキも2mm下がって、全体的な低重心化に大きく貢献しています。ロールセンターに対して重心が下がることにより、ハイグリップでの走行時に過度なロールが減少。特にオーバーグリップ傾向の強い昨今のレースシーンでは、ハイサイド防止に効果が高いのはもちろん、スタビライザーに依存し過ぎずにセッティングが行えるため、よりニュートラルなステアリング特性に仕上げることが可能です。
もっとも高い位置にあるショックタワーもローダウンすることで低重心化に貢献しています。BD7 2015標準のリヤショックタワーに比べて7.8mm低く、従来はオプション設定であったショートショック仕様に比べてもマイナス5.3mmと大きく下がりました。ショックはショートタイプが標準装備となっています。
ショートショックは単に全長を短くするだけでなく、シリンダー内径を広げることで大きく容量アップ。新型のスーパー ローフリクション ショートショック “II” は、シリンダー内径を従来の10.2mmから11.2mmに広げ、旧型ショートショックよりも大幅に容量アップをしているのはもちろん、これまで大容量とされていたヨコモSLFスタンダード サイズよりも約20%の大容量化を果たしています。以前はショート化することで操作感がピーキーになるといわれていましたが、SLF ショートショック “II”ではハイスピード化に伴って高まるサスペンションへの要求を受け止め、高い操縦安定性をもたらします。また、大容量化することで走行中の熱などによる粘度変化を減少させ、レース中の特性変化が少なくなることも安定感の高さにつながっています。
ステアリング操作時の駆動ロスを抑えるフロント ダブルジョイント ユニバーサルシャフトが標準装備となりました。現在主流の駆動スタイルであるフロント ソリッドアクスルでの走行時には、コーナーリング時の舵角が大きくなる傾向にあり、失速感が感じられることが多くなりました。BD7 2016ではレース参戦の必須アイテムとも言えるダブルジョイント ユニバーサルシャフトを標準装備とすることで、ナチュラルなターンインとコーナーリングスピードの向上を果たしています。また、この標準装備化に伴い、ダブルジョイント ユニバーサルシャフトの単品販売価格も¥4,980(税別)に値下げいたしました。
発売直前のAOCレースで BD7-2016 デビューto WIN 2位に約1周の大差をつけて優勝!
11月28-29日、谷田部アリーナで行われたAOC(アジア・オンロード・チャンピオンシップ)は、今年で5年目(先駆のATS名称を加え)5回目の開催となり、アジア圏内で行われるインターナショナルレースとして定番化するとともに、海外からの参加選手も年々増加し今回は参加申し込みも締切日よりも前に定員オーバーになるほどの状況になりました。
谷田部アリーナ開催のAOCが世界のビッグレースとして認められたこともあり、今年は国内はもちろんの事、海外からもワークスチームのトップドライバーが参加、その中には松倉直人選手、ジルス・グロスカンプ選手、アンディー・ムーア選手のツーリングカーワールドチャンピオンの3選手も名を連ねており、BD7-2016のデビューレースに相応しいビッグイベントになりました!
このレースに参戦したチームヨコモのドライバーのうち、ロナルド・フェルカー選手、ミーン・ベジャラ選手、ニコラス・リー選手の3名は、市販状態の新型BD7 2016に、純正オプションパーツを装着した仕様で参加しました。2016の基本性能が試される絶好の機会です。ロナルド選手らは積極的に現地でセッティングとデータ収集を行っていましたが、レース前のテストから走行するたびにコースレコードを更新し続け、予選が始まるとその速さで他社マシンを圧倒するパフォーマンス見せつけ、ロナルド・フェルカー選手が連続、全てトップゴール、パーフェクトポイントで予選ポールポジションを獲得しました!
同じく新型BD7-2016を使用するニコラス・リー選手は、予選4回目のレース序盤ではロナルド選手とハイレベルなトップ争いを演じるパフォーマンスを見せて予選2位を獲得、予選3位には現行BD7-2015を使用する松崎隼人選手が入り、4位に新型BD7-2016を使用するミーン・ベジャラ選手、5位にBD7-2015を使用する永島友吾選手が入り、ヨコモBD7シリーズが3名のワールドチャンピオンを抑えて、予選1位から5位を独占し、更に予選トップ10になんと8台のBD7シリーズが入るという超快挙を達成しました!
決勝レースでもロナルド選手とBD7-2016はその好調さを更に加速させ、スタートからぐんぐん後続を引き離し、驚異のハイペースで走行し続けて、2位の選手に約1周差というビッグレースではこれまで見たことのない圧倒的な大差をつけて、BD7-2016のデビューレースでTQ&優勝を成し遂げました!また、予選から好調で決勝も期待の掛かったニコラス選手、松崎選手、ミーン選手は、決勝レース序盤でまさかのクラッシュ! 3名とも大きく順位を落とすも、その後はロナルド選手に続くベストラップを叩き出して追い上げましたが、決勝レースが1回だけだった事もあり、彼らにとっては満足のいくリザルトは残せませんでした。しかし、彼らも今後の手応えは十分に感じられた事でしょう!今回は表彰台独占というわけにはいきませんでしたが、BD7‐2016の圧倒的な速さは、決勝で2位に約1周差をつけるという有り得ないパ
Aluminum Rear Left Bulkhead Cap(Chamfer)for BD8/BD7 2016